〜いつまでも教え子に憧れられる存在で居続けるために〜
第1回 定年後、どんな姿で教え子の前に立ちたいか?
〜「教え子のための人生」から「自分のための人生」へ〜
■1 70 代の恩師が見せてくれた、圧倒的な「生き様」
私には、小学校時代に大変お世話になった尊敬する恩師・S 先生がいます。
一人ひとりの良いところを見つけては型破りなアプローチで伸ばしてくれる、温かく魅力溢れる
先生でした。
ある日、私は同級生たちと共に、70 代半ばを迎えられた S 先生がグリークラブの指揮者としてス
テージ上でパワフルにタクトを振るう姿を目にする機会がありました。
客席で共にその圧巻の姿を見つめていた同級生の一人が、しみじみとこう呟きました。
「S 先生は、いつまでも S 先生だよな」
昔の思い出話や過去の栄光だけに浸るのではない。
歳を重ねても自分の「好きなこと」に情熱を燃やし、人生を堂々と謳歌し、輝き続けている姿。
それこそが、教え子にとっていつまでも誇らしく、憧れ続けるセンセイの「生き様」なのだと強
く確信した瞬間でした。
あなたは定年後、どんな姿で教え子の前に立ちたいですか?
■2 学校という列車を降りたあとに残る、長い「2 周目の人生」
段階的な定年延長や暫定再任用制度が整い、65 歳まで学校現場で働き続ける選択肢は当たり前に
なりました。しかし、65 歳を迎えたその先には、まだ 20 年以上の長い時間が残されています。
教員生活という「1 周目の人生(最初の山)」を無事に登り切ったあと、その思い出の余韻だけで
残りの 20 年を過ごすのは、あまりにももったいないと思いませんか。
学校という長年乗り慣れた列車を降りたとき、多くの先生が次の足踏みを起こしてしまいます。
- 「学校以外の世界を知らないから」という漠然とした不安
- 「自分でキャリアを決める(キャリアオーナーシップ)」経験の少なさ
- 「教員」という重い鎧やプライドを脱ぎ捨てられない葛藤
- 「これまで十分に働いたから」という燃え尽きや安息への想い
子どもたちのためにすべてを捧げ、誠実に現場を支え続けてきた先生だからこそ、こうした壁や
葛藤を抱えるのは極めて当然のことです。
■3 知的好奇心の火種を、今度は「自分のため」に灯す
私は知っています。
教員という職業を選んだ先生方は、誰よりも知的好奇心が高く、本来は新しい学びや体験に心を
躍らせることができる人たちだということを。
教員時代、多忙な毎日のなかで「やりたくてもやれなかったこと」はありませんか?
子どもの頃に夢中になっていたのに、途中で諦めてしまった「好きの原石」はありませんか?
これまでは「教え子のための人生」「学校のための人生」を全力で駆け抜けてきました。その役目
を終えたあなたのセカンドキャリアでは、その高い知的好奇心を存分に発揮して「自分のための
人生」に切り替えていいのです。
■4 一歩を踏み出すための「3 つの意識改革」
「今さら新しい挑戦なんて……」と身構える必要はありません。
まずは小さな意識改革から始めてみましょう。
① 「教員の鎧」をそっと脱いでみる
過去の役職や立場ではなく、「一人の人間としての素の自分」が何に心惹かれるのか、素直に問い
かけてみてください。
② 昔夢中だった「好奇心の火種」を思い出す
旅行、写真、歴史、音楽、手芸、スポーツ……。昔好きだったことや関心を寄せていたことの中
に、新しい山を登るための最高の「タネ」が隠れています。
③ 現役のうちに「次の乗り物」を探し始める
終着駅に着いてから「次は何に乗ろうか」と考えていては遅すぎます。現役のうちから、校外の
コミュニティや勉強会に少しだけ顔を出してみる。その小さな一歩が、予期せぬチャンスや素敵
な出会い(ハップンスタンス)を引き寄せます。
■5 あなたの人生の主役は、あなた自身です
定年後も新しい挑戦をして自分の人生を謳歌し、輝く姿を見せること。それこそが、あなたが教
え子たちに贈る「最後にして最大の教育(生き様の見せる指導)」になります。
「先生は、学校を辞めてからも人生をめちゃくちゃ楽しんでいるよ!」
そう笑顔で胸を張れる未来を、今ここから描き始めてみませんか。
たった一度の人生です。
あなたの物語の主役は、他の誰でもないあなた自身なのです。
・次回 第 2 回「再任用・定年延長のリアル〜学校に残る選択と、65 歳以降の課題〜」へ続く



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