【第2回】
再雇用という選択
〜「会社に身を委ねた」のであれば、プロとしての義を果たし定年を迎え、再雇用という道を選んだあなたへ〜
そこにあるのは「これまでの延長線上の日常」ではありません。あなたは新しく「プロとしての契約」を会社と結び直したのです。
ところが、面談の場で耳にするのは、寂しくも厳しい本音です。
「給料は大幅に下がったのに、仕事の内容は現役時代と変わらない。これではモチベーションが上がるはずがない」
その気持ちは痛いほどわかります。
ひょっとしたら、再雇用という選択を「年金がもらえるまでの消化試合」や「静かにやり過ごすための待合室」と勘違いしていないでしょうか。
再雇用という道が持つ「真のメリット」
厳しいことをお伝えする前に、再雇用という選択がもつ大きな利点についても触れておきます。自ら外の世界へ飛び出す道ではなく、今の会社に残るという決断には、確かなメリットが存在します。
〇 「信用」という資産の継続
社外では一度リセットされるあなたの実績や人脈が、今の会社ではそのまま強力な武器として機能します。
〇 低リスクでの挑戦
毎月の給与が保障されていることは、失敗を恐れずに新しい役割やスキルの習得に挑める「最強のセーフティネット」になります。
〇 貴重な「助走期間」
責任の重いポジションから解放されつつ、社会との繋がりを維持できる。これは人生の後半戦をどう生きるかを整理するための、非常に恵まれた期間です。
これほど充実した環境を会社から提供されている再雇用は、60歳以降の働き方の選択肢であると言えるでしょう。
周囲を、そして自分を疲弊させる「静かな退職」
しかし、もしあなたがその恩恵を享受するだけで、「新しいシステムは覚えられない」「進んで仕事は引き受けない」といった思考停止に陥っているのなら、今すぐその認識を改めましょう。
その態度は、あなたが想像している以上に、周囲を、そしてかつて自分が愛したはずの組織を疲弊させています。
あなたが「できない」と背を向けた業務を、誰かが肩代わりしています。年上の部下に気を使い、動かないシニアの分まで汗を流す若きマネージャーの苦悩や、その背中を見ている若手社員の絶望に、一度でも思いを馳せたことがあるでしょうか。
何より、周囲に「重荷」だと思われながら過ごす時間は、あなた自身の自尊心を少しずつ蝕んでいきます。
自分自身の人生を「退屈と疎外」という牢獄に閉じ込める、最も過酷な選択をしているのは自分自身なのです。
「身を委ねる」という決断の重み
第1回で、私は「人生のハンドルを自分に取り戻そう」とお伝えしました。60歳という節目に、慣れた会社で働き続ける道を選ぶ。それは、人生のハンドルを再び会社に預け、自らの時間を組織の命運と共に歩ませるという決断ということになります。
であれば、安定という恩恵を享受するだけでなく、選んだ場所に対して誠実さを見せるのが、プロとしての「義」ではないでしょうか。給料が下がったことは、手を抜く免罪符にはなりません。むしろ、限られた条件の中で、長年の経験という武器をいかに「組織の利益」へと還元するか。そこにこそ、シニアにしか果たせない、新しいプロの役割があるはずです。
65歳の退職日に、自分を誇れるのか
私があなたに贈りたい言葉は、これに尽きます。
「会社に身を委ねたのであれば、重荷になるな。推進力になれ。」
新しいことに挑戦し、自分のやり方をアップデートし続ける。後輩のために自分の知見を惜しみなく手渡す。そうして現場を明るくし、組織の推進力となって働く姿こそが、周囲からの真の敬意を呼び戻します。
65歳の最後の日、オフィスを出るとき。「なんとか逃げ切った」と負い目を感じて去るのか。それとも「プロとして、最後まで組織の役に立てた」と清々しい達成感をもって去るのか。
その差を決めるのは、今、この瞬間からのあなたの「覚悟」です。

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次回への予告
今回は「会社に残る」選択を深掘りしました。しかし、もう一つの道があります。 組織を離れ、自ら荒野へ踏み出す「独立・起業」という選択です。
次回は、本当の意味で人生のハンドルを握り、自分の力で歩み出すための「リアルな条件」についてお話しします。


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