~目標の空白期間を「納得感」に変える処方箋~






「課長」という椅子に座ってから、数か月。

あれほど目指していた場所なのに、いざ座ってみると「自分はこの先、どこへ向かえばいいのだろう」と、視界がかすんでしまう。

そのような「目標の空白」に陥っていませんか。

キャリアコンサルタントとして新任マネージャーの方々と面談をしていると、多くの人が共通の「迷い」を抱えていることに気づかされます。

 

1.なぜ、マネージャーになった途端に目標を失うのか

        そこには、新任マネージャー特有の「3つの要因」が潜んでいます。

①「登頂」という目的の達成と喪失

これまでは「昇進」という明確な山頂を目指して走ってきました。しかし、いざ椅子に座ってみると、そこはゴールではなく、終わりのない管理業務や調整が続く「平原」でした。目指すべき山を見失い、燃え尽きに近い感覚に陥っているのです。

②「獲得した喜び」と「実務の苦労」のギャップ

役職を手に入れた喜びは一瞬です。現実は、部下との距離感や板挟みのストレスなど、コストばかりが目につきます。プレイヤー時代の「自分の手で成果を出す快感」が得られず、今の仕事に満足感を見出せなくなっているのです。

③「就任の経緯」による動機のズレ

自ら望んだ人ばかりではありません。年齢的に押し上げられた人、待遇面を期待して座った人もいます。本音では「現場が好き」なのに、役割だけが先行してしまい、心が追いついていない状態になっているのです。


これらが重なり、上司からの「次の目標は?」という言葉が、期待ではなく「さらなる苦行への誘い」に聞こえてしまうのではないでしょうか。

2.「再契約」を結び直す──自分の意志で「椅子」に座り直す

きっかけはどうあれ、最後にその椅子に「座る」と決断したのは、あなた自身です。

だとしたら、今必要なのは、「今の自分」と「マネージャーという役割」のあいだで、「再契約」を結び直すことではないでしょうか。


これは会社に言われた通りに働くという契約ではなく、「この椅子を使って、自分はどんな挑戦を楽しみたいか?」を自分自身に宣言する、ポジティブな儀式です。具体的には、次のような視点で自分と対話してみます。

①「自分の持ち味」をマネジメントに持ち込む

「マネージャーはこうあるべき」という固定観念を一度捨ててみてください。例えば、得意な「現場の専門性」を育成に活かしたり、自身の「聞き上手」な面をチームの安心感に変えたりしてみる。そうして、「自分らしいスタイルのマネージャー」として、役割を塗り替えていくのです。

②この椅子でしか得られない「景色」を味わう

プレイヤー時代には見えなかった「組織が動くダイナミズム」を肌で感じたり、「人が成長する瞬間」に立ち合ったりすること。この椅子に座っているからこそ経験できる「新しい面白さ」を見つけ、それを自分の報酬にすると決めることです。

③役割を「自分をアップデートする舞台」にする

「管理」を苦行と捉えるのではなく、一段高い視点から物事を見る「視座」を手に入れるための、エキサイティングなトレーニング期間だと捉え直してみます。

この再契約は、誰かに強制されるものではありません。「誰のものでもない、自分自身のキャリアを歩むために、今はこの椅子でこれを成し遂げよう」。

そう思えたとき、無理に座らされていた椅子は、あなたの可能性を広げる「コクピット」に変わるはずです。

3.「ありたい姿」を再定義する──内なる北極星を見つける

再契約を結ぶために、まずは静かに自分に問いかけてみてほしいのです。


「もし制約が何もないとしたら、自分はどんなマネージャーで在りたいだろう?」

「部下が困った時に、真っ先に顔が浮かぶ存在になりたい」

「数字だけではなく、チームの笑顔も守れるリーダーでありたい」

「自分の専門性を活かして、若手が育つ土壌を作りたい」

正解はどこにもありません。

あなたの中から湧き出てくるその「在り方(Being)」こそが、

他人事だった役割を「自分の物語」へと変える、新しい北極星になります。

4.「10点」の魔法をかける──霧を晴らし、一歩を踏み出す

「ありたい姿」が見えてきたら、次は現状を見つめてみましょう。


「理想とするマネージャー像を100点とすると、今の自分は何点でしょうか?」

おそらく、100点満点からはほど遠い数字かもしれません。でも、それでいいのです。次に、こう自分に問うてみてください。


「その点数を10点だけ上げるために、明日から何ができるだろう?」

100点を目指して足をすくませる必要はありません。

「明日は、部下の話を最後まで遮らずに聴いてみる」

「会議の冒頭で、自分の正直な想いを一言だけ伝えてみる」

そのような「10点分のアクション」なら、明日から始められる気がしませんか?

5.結びに

目標とは、必ずしも「次の役職の名前」である必要はありません。

自分が選んで座ったその椅子で、理想に向かって「プラス10点」の誠実さを積み上げていく。

その小さな手応えの連続こそが、霧を晴らし、あなたを前へと運ぶ確かな原動力になります。

まずは明日、あなた自身の「10点」を形にしてみませんか。



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